お客様は神様・・・ではない

「お客様は神様です」
 これは1964年の東京オリンピックの年に東京五輪音頭を歌った三波春夫さんの言葉として有名ですが、経営においても、お客様を神様と思って行動しなさいとよく言われます。

しかし、実はお客様は神様ではないんです!

 私の経営の先生の井崎貴富先生は「お客様を神様だと言って何でも言うことを聞いていると会社は潰れるぞ!」と言われます。

 ちょっと前ですが、カスハラ保険というのができて、加入する中小企業がどっと増えているという新聞記事がありました。カスハラとは、カスタマーハラスメントのことで、顧客が従業員に理不尽な要求を突きつけることです。不当要求、誹謗中傷、謝罪の強要などです。

 また、こんな記事も目にしました。
 Go To トラベルによって日本人の醜い姿が浮き彫りになっているという記事です。
 都内の星つきホテルの従業員の話では、Go To トラベルが始まってからお客さまの質が変わってしまいました。人間性を疑うような言動のオンパレードで、その内容は、セクハラ発言、外国人スタッフへの差別的な発言、部屋のミニバーの無申告、部屋の備品の持ち帰りなど、枚挙にいとまがないそうです。

 これらは極端な例で、当然、たとえお客様だとしても、要求に応じたり、行動を容認したりすべきものではないと思います。
 しかし、通常の場合でも、一般にお客様というのは、色々な要望や無理難題を突きつけてくるものです。

 では、どうしたら良いのでしょうか?

 「お客さんを神様くらいに思わないと、お金をもらっているのだから失礼だよ」と言われる方もいるでしょう。

 でも、よく考えてみてください。
 私たちは神様からお金をもらいますか? 神様の言うことを聞くから、神様にお金くださいって言いますか?
 逆ですね。神様にお願いするときには、お賽銭を出しますね。お金やお布施を貰うのは神様なのです。
 お店や会社はどうでしょう?お店や会社は、お客様や取引先からお金を貰いますね。ですから、実は神様はお客様でなくて、お店や会社の方なのです。

 えっ?と思うかもしれませんが、これが真理です。
 井崎先生は「お客さんから、神様と思ってもらえるくらいの商売をしないといけない」と言われます。

 お客様や取引先から、「いつも欲しいものをリーズナブルな値段で買わせて貰ってありがとう!」「いつも、おいしい料理をありがとう!」「いつも、納期をきっちり守って品質も確かなものをありがとう!」と感謝してもらい、「これからは必ずあなたのお店で買います。」「次も貴社に必ず依頼します。」「あなたのお店のお願いは受け入れます。」「貴社の条件には従います。」というように、大袈裟にいえば、お客様が、お店や会社に対して忠誠を誓ってくれるくらいの会社にならないといけないということです。

 これは簡単なことではないです。だって、神様になるのですから!

 では、どうすればよいでしょうか?
 簡単な答えはありませんが、ひとつのヒントとして、私たちが神様にお願いするのはどんな時、どんな事でしょうか?考えてみましょう。

 困った時の神頼みという言葉がありますが、困った時や、心配事がある時ですね。また、家内安全とか無病息災、交通安全など、安心安全をお願いしたりもしますね。 さらに、学業成就、縁結びなど、幸福、平和を願う事もあります。

 ですから、お店や会社がお客様にとって神様になるには、お客様のこのような願いを叶えることができる商品、サービスを提供できるようになることが、まずは第一ではないかと思います。

 そして、良い神様は、俺は神様だぞ!と偉そうにしません。いつも優しい眼差しで私たちを見守ってくれているものです。
 ですから、会社(経営者、経営担当者)は、常にお客様の事を見ていること、考えていることが大切です。

 


(注)
「お客様は神様です」という三波春夫さんのこの言葉の真意は、お客様=神様というのではなく、世間に勘違いされて伝わってしまっているということが、三波春夫オフィシャルサイトに記載されています。
 舞台ではあたかも神前で歌うようにお客様を神様と見立てて真剣に歌うことを表現したのであって「お客様は神だから徹底的に大事にして媚びなさい。何をされようが我慢して尽くしなさい」などと発想、発言したのではないということが書かれています。
→リンク:三波春夫オフィシャルサイト